(質問)当社のA工場のX棟については、現状、使用しておらず、近い将来、解体を実施の上、建て替えを検討しております。このX棟について、法人税基本通達7-7-2の規定に基づいて、有姿除却を行うことは可能でしょうか?
(回答)
有姿除却を行う前提には,固定資産の固有の用途を廃止し,再利用の可能性がないと認められる客観的な事実が必要です。建物自体が残っている現状では,単純に建屋の閉鎖という事実のみをもって,使用価値を失っていると判断することは困難と判断します。
有姿除却は,固定資産としての使用価値がゼロとなった事実に基づいて,損失の計上を認める取扱いとなっています。ただ使用目的が終了したことをもって,その固定資産の使用価値が直ちにゼロになるわけではないと考えられます。
特に,建物の場合には,設備工場として使用しなくとも,倉庫等の別の用途で使用する可能性は残されていると客観的に判断されると考えられ、その可能性が残されている以上,建物の経済的価値が喪失し,無価値になったとは言い切れないものと考えます。
その建物自体が、実際に使用されていなくても,再び使用することができる可能性の有無については,客観的に判断されなければなりません。会社の経営判断という主観的思考だけでは,固定資産の使用価値がゼロとなったことの実証にはならないものと考えます。
例えば,製造機械や製造工程と一体となっているような特殊な構造を有する建物であれば,製造ラインが廃止されたことに伴っての有姿除却を適用することは考えられます。
しかし,今回のケースのような場合,既存建物が別の用途に供される可能性は充分に考えられるため,有姿除却の適用は困難と考えます。
従って、建物の除却が物理的に完了した時点で,建物除却損失が計上されることになります。