賃上げを後押しする制度として「賃上げ促進税制」がありますが、一定の賃上げが行われないと税額控除の適用が受けられません。
決算間際で、賃上げ率が足りなかったことが発覚した場合に、使用人へ決算賞与を支給して要件を満たしたす方法があります。
雇用者給与等支給額は、損金算入される国内雇用者に対する給与等の支給額と定義されていますので、損金算入が認められるのであれば未払いであっても問題ありません。
政策的な税制優遇措置の要件を満たすために、臨時に決算賞与を支給することが租税回避として否認されることはありません。
未払いの決算賞与で損金算入要件を満たす場合の要件としては、次の3つの要件を充足することが求められています。
①その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。
② ①の通知をした金額を当該通知した全ての使用人に対し当該通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1月以内に支払っていること。
③その支給額につき①の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。
②の要件は通知した者へ通知額を1か月以内に支払えばいいので難しくはありません。
③の要件は決算時に会計処理を施せばクリアできます。
実務的なポイントとなるのは①の通知義務を忘れないことです。
支給額が決まっていない状態では、債務が確定していませんので、債務確定基準に照らしても損金算入要件を満たしていないことになります。
事業年度内の受給者への通知義務は、必須要件なので避けては通れません。
この時、口頭での通知も否定はできないですが、口頭では通知義務を履行したことを証明するエビデンスがないため税務調査で受給者へのヒアリングが行われた場合に、「聞いていない」などと証言されたら、損金性が疑われます。
従って、あえてエビデンスは残すべきです。
例えば、使用人に対し支給額の通知をしたことを後日確認できるような措置をしておくことが望ましいものと思われます。メールで通知するのであれば、開封メッセージがあると安心です。
【参考文献:税務通信3850号】