企業が人に仕事を依頼して支払う費用は、「外注費」として処理できる場合と「給与」として処理しなければならない場合があります。この区分は単なる会計処理の違いにとどまらず、消費税の仕入税額控除の可否や源泉徴収の義務といった、大きな税務上の影響をもたらします。特に「一人親方」など、従業員を持たず独立して働く小規模事業者との取引では、この判断が重要です。
税務上の有利・不利
●外注費
・消費税法上の「課税仕入れ」に該当 → 仕入税額控除OK
・源泉徴収不要
●給与
・課税仕入れに該当せず → 仕入税額控除不可
・源泉徴収が必要
このため、支払う側にとっては「外注費」と判断された方が圧倒的に有利になります。
判断の難しさ
判断基準は法令や判例で示されていますが、最終的には事実認定に依存し、ケースごとに微妙な判断が必要です。昭和56年最高裁判決(弁護士報酬事件)は、その大枠を以下のように整理しました。
●事業所得(外注費)=独立性要件
自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性・有償性があり、反復継続して遂行する意思と社会的地位が客観的に認められる。
●給与所得=従属性要件
雇用契約等に基づき、使用者の指揮命令下で労務を提供し、空間的・時間的拘束を受け、その対価を得る。この「独立性」と「従属性」のバランスが、判断の核心です。
消費税法基本通達の視点
国税庁の「消費税法基本通達1-1-1」では、契約形態や実態に基づき以下の項目を総合的に考慮するとしています。
1.他人による代替の可否
2.指揮監督の有無
3.危険負担(不可抗力による損害の負担者)
4.材料や用具の供与の有無
例えば、材料や道具を依頼者が用意している場合は雇用に近いとみられやすいですが、それだけで給与とは限らず、複数項目を総合判断します。
実務への影響と傾向
近年の裁判例では、給与と判断されるケースが目立ちます。平成21年の個別通達以降、給与の範囲が拡大する傾向も指摘されており、外注費として処理していたものが給与とされるリスクが高まっています。
まとめ
外注費と給与の区分は、単なる勘定科目選択ではなく、税務リスク管理そのものです。契約書の名称や社会保険加入の有無だけで判断せず、実態に即した「独立性」と「従属性」の検証が欠かせません。特に建設業など一人親方との取引では、通達や判例に照らして慎重に判断し、必要に応じて事前に専門家の助言を受けることが、無用なトラブルを避ける近道です。