100%子会社に対する債権放棄や資金支援は、原則として「寄附金」扱いとなり、
・親会社:損金不算入
・子会社:益金不算入
となります。
しかし、子会社の整理・再建のためにやむを得ない合理的理由があり、経済合理性が認められる場合には、
・親会社:全額損金算入
・子会社:債権免除益等として全額益金算入
とされ、グループ法人税制上の寄附金規定は適用されません。
判断の分かれ目は、「贈与か、損失回避のための経済行為か」です。
業績悪化が続く100%子会社を前に、「清算に向けて債権放棄や資金支援をせざるを得ない」という局面は、企業グループでは決して珍しくありません。
このとき実務で最も悩ましいのが、税務上それが「寄附金」になるのか否かという問題です。
原則:合理性なき債権放棄は「寄附金」
グループ法人税制では、完全支配関係(100%支配)にある法人間で、合理的理由なく債権放棄や無償の資金提供を行った場合、それは「寄附金」として扱われます。
結果として、
・親会社:損金不算入
・子会社:益金不算入
となり、税務上は“なかったこと”に近い処理になります。
単なる身内支援では、税務上の救済は受けられないということです。
例外:損失回避のためなら「寄附金ではない」
一方で、法人税基本通達は現実を見ています。
親会社が子会社を整理・再建する過程で、債権放棄をしなければ、より大きな損失を被る子会社はすでに債務超過で、回収見込みがない合理的な整理・再建計画に基づく支援であるといった相当な理由が認められる場合には、その債権放棄は「贈与」ではなく、経済合理性ある損失負担と評価されます。
この場合、
・親会社:全額損金算入
・子会社:債権免除益として全額益金算入
となり、寄附金規定は適用されません。
実務判断の3つのチェックポイント
税務上の判断では、次の点が総合的に見られます。
1.子会社は本当に経営危機か
(債務超過が相当期間継続し、回収不能か)
2.債権放棄は損失回避のために不可避か
(放置すれば、さらに損失が拡大するか)
3.支援額は合理的か
(過剰支援・場当たり的対応になっていないか)
この3点が説明できなければ、寄附金認定のリスクは高まります。
貸倒損失との違いにも注意
債権放棄は、完全に回収不能 → 貸倒損失(全額損金)
整理・再建のためのやむを得ない放棄 → 損失負担(全額損金)
それ以外 → 寄附金(限度額まで損金)
と整理されます。
「財務状況が悪い」という抽象的な理由だけでは足りず、客観的事実の積み上げが不可欠です。
実務アドバイス:書類が命
債権放棄を行う場合には、
・債権放棄に至った経緯
・財務改善計画や清算方針
・取締役会議事録、契約書、通知書
などを必ず書面で残すことが重要です。
税務調査では、「なぜその判断をしたのか」が説明できるかどうかが最大のポイントになります。
まとめ
100%子会社への債権放棄は、
「寄附金」か「損失」かで税務結果が大きく変わる行為です。
重要なのは、
それが“身内への贈与”ではなく、
“合理的な経済判断による損失回避策”であると説明できるか
この一点に尽きます。
子会社整理を検討する際は、税務リスクを見据えた計画性と証拠整備が不可欠といえるでしょう。